2012-10-10
Kappa の飼い方(Kappa という ORM の話) その7 テーブルクラスとそのカスタマイズ
こんばんはこんばんは。YAPC も(ry もういいか。ずいぶん経つもんね。
Kappa という ORM の話。 今日はテーブルクラスとそのカスタマイズ方法についてです。
目次
- その1 開発の背景のお話
- その2 インストールとかのお話
- その3 基本操作
- その4 select 系いろいろ
- その5 Row オブジェクトの基本
- その6 Row オブジェクトのカスタマイズ
- その7 テーブルクラスとそのカスタマイズ
- その8 雑多な話
- その9 SQL をテーブルクラスに置く
事前準備
前回と同じものを使います。
スキーマは分かりますよね? detective.toys_id = toys.id で結合します。(前回と同じ)
メモリ上にテーブルを作っているため、前回入れた人もデータを入れる必要があります。
テーブルクラスって何?
Kappa には model() というメソッドがあります。これを呼ぶと、テーブルクラスのインスタンスが返ります。
テーブルクラスはデフォルトのインスタンス(ここでは $db)とほとんど同じですが、自分自身のテーブル名を知っているため、 select/insert/update などの各メソッドを使う際に、テーブル名を省略できるようになります。
また、テーブルごとにカスタマイズしたメソッドを持てるようになります。
あと、以前 Row オブジェクトの説明で、Row オブジェクトの db() は Kappa のインスタンスと大体同じ、と説明しましたが、 厳密には、この model() メソッドで取り出したインスタンスと同じです。Row オブジェクトは(たいてい)テーブル名を知っている ため、そのようになっています。
カスタマイズ方法
ではテーブルクラスのカスタマイズをします。プロジェクトは前回同様 MilkyHolmes を使います。detective テーブルをカスタマイズ します。
ファイル名でいうと、lib/MilkyHolmes/DB/Table/detective.pm。 パッケージ名でいうと、MilkyHolmes::DB::Table::detective となります。
前回と似てますが、detective.id を引数にとって、toys.name (トイズの名前)を返す、toys_name_from_detective_id という メソッドをつけてみましょう。
テーブルクラス内では、拡張しているテーブル自身(今回の例では detective)を省略することができます。 つまりテーブルクラス定義内の $self は Kappa のインスタンスではなく、$db->model(‘テーブル名’) したものに なります。
カスタマイズしたテーブルクラスの使い方
Row オブジェクトの場合と同様、このままでは、定義したテーブルクラスを使うことができません。 Kappa に テーブルクラスの定義がどこに置いてあるかを教えてあげる 必要があります。Kappa の new にオプションとして table_namespace というオプションをわたします。
こうすることで、テーブルクラスの定義が 「MilkyHolmes::DB::Table::テーブル名」 にあることが Kappa さんに伝わります。 これにより、カスタマイズしたメソッドが呼べるようになります。
共通のメソッドをテーブルクラスに定義したい
テーブルに依存せず、すべてのテーブルクラスに共通の処理を定義したい場合もあるかと思います。 Row オブジェクトの場合と同じように、Kappa は テーブルクラスの定義を、
- 「table_namespace::テーブル名」 で定義された、テーブル名単位のもの
- table_namespace
- Kappa (基本機能)
の順に検索します。ですので、共通処理は table_namespace におきます。今回の例だと、 MilkyHolmes::DB::Table(ファイル名だと lib/MilkyHolmes/DB/Table.pm )におきます。
たとえば、insert したあとに、id を返す insert_and_last_insert_id を実装してみます。
カスタマイズしたテーブルクラス(detective テーブルのもの)からも使えるように、親クラスを変更しておきます。
ただし、table_namespace に定義した場合、Kappa のインスタンスからは利用できないので、かなり微妙です。 ですので、共通機能は、もう一つ上の、「プロジェクト名::DB」に置くことの方が多いです。(この例では MilkyHolmes::DB)。
で、table_namespace のほうは、この拡張したクラスを継承するようにします。こんな感じ。
で、インスタンス化する対象を Kappa のインスタンスではなく、「プロジェクト名::DB」のインスタンスにします。
また、都度 row_namespace や table_namespace を指定するのはだるいので、コンストラクタをオーバーライドするのが おすすめです。
こうすると、先ほどの呼び出しは、
とシンプルに書けるようになります。
なぜテーブルクラスが重要か
テーブルクラス内では、自分自身のテーブル名を省略できる、というのが最大のポイントです。
テーブル名が省略されていない呼び出しを見つけると、「あれ?この部分はメソッドに切り出して、 省略できるように他のクラスに移動した方がいいんじゃないかな?」と思うようになります。 (そして、その移動したメソッドは他のクラスからも再利用できるかもしれない、ってか出来ることが多い)
DB設計の時点でミスるとダメかもしれませんが、基本的には、テーブル名を省略できるように書いていくだけで、 ある程度キレイな API が作れるようになっています。(Row オブジェクトを上手に作っても多分実現できるのですが、 テーブルクラスでやるほうがずっと簡単です。)
ですので、Kappa においては、Row オブジェクトよりもテーブルクラスのほうが重要な訳です。
サンプル
今回も動作するサンプルを作成しました。 bin ディレクトリの customized_table_class.pl が今回のサンプルです。lib/MilkyHolmes/ 配下も実装してありますので、確認してみてください。
まとめ
今回はテーブルクラスと、そのカスタマイズ方法を解説しました。これで伝わってるのかだいぶ微妙なのですが、 もうちょっと書いていこうと思います。次回は雑多な話をしようかな。多分最終回です。
なにかリクエストや疑問や文句などあれば、twitter(@tsucchi) とかこのブログのコメント欄(使ったこと無いから使えるか分らんけど)とか、はてブとか、 その辺で連絡してみてください。Kappa 自体の要望とかバグなどあれば、@tsucchi か github issue(日本語でいいです。ってか日本語のがいいです)まで。
ではでは。また次回。